日経Bizアカデミーより、日本マクドナルドホールディングス代表取締役会長兼社長兼CEO原田泳幸氏のコラムを抜粋しています。
店舗に行くと、必ず発見があります。
先日、コーヒーがおいしくなったというマスコミ向けの発表会をしましたが、その直前に、私はコーヒーの担当者と都心の店舗の店長に、「100円のサンプリング・キャンペーンのスタートは2月初めで、テレビコマーシャルが始まったのがつい最近だけど、テレビコマーシャルが始まる前後で売り上げはどう変化したか」と聞きました。
ですが、彼らは即答できませんでした。
つまり、テレビコマーシャルが始まる前後の売り上げに興味を持っていないのです。
やはり、お店に行って商売のにおいをかぐと 同時に、商売に興味を持たなくてはいけません。
そこで、すかさず彼らを「3分間ストアツアー」に連れて行きました。
店に入り、100円のサンプリング・キャンペーンのメッセージがどこにあるかと見たら、レジ上とメニューボードに小さい字で「今だけ100円」と書いてありました。
私は、すべてのテーブルにキャンペーン・メッセージを置くことは考えないのかと言いました。
また、「今だけ100円」と書いてあるが、お客様が「今だけ」というものを覚えてくれると思ったら大間違いだとも言いました。
140円に戻したら、値上げと思うお客様が出てきます。
140円の値付けに×をつけ、その横に「今だけ100円」とすべきです。
よく来店されるお客様もいらっしゃれば、初めてのお客様もいらっしゃる。
お客様によってどうとらえるかという感覚が違います。
これが、店舗に行って3分間ですぐ分かる「3分間ストアツアー」です。
そして、みんなそこから考え始めますので、この思考する姿勢をどう育てるかというのが私の腕の見せ所です。
マクドナルドのような大企業の最も不利な点は、経営のトップの考えが社員の隅々にまで浸透しない点にあります。
どんなに経営者が敏腕で画期的なシステムを打ち出しても、それを社員がきちんと理解していなければそのシステムは機能しません。
100円コーヒーの表示の仕方なんてほんの小さな気付きでいいはずなのに、それに気付かない。
テレビCMの前後の売上を気にかけてもいない。
なぜコーヒーをサンプリングをして、なぜ今だけ100円で、なぜテレビCMをしているのか。
それをすることでどういう購買層が何時に増えたのか、無料コーヒーと一種にハンバーガーやポテトをどれくらい買ってくれたのか。
いち店長はそんなことを考える暇がないくらい日々の業務に忙しく、経営的視点から客観的にみることなくついダラダラと毎日を送りがちになってしまいます。
経営者からするともどかしいことでしょう。
その点中小企業にはそういったもどかしさはあまりありません。
経営者の意図することを直接面と向かって社員に説明することができるからです。
また逆もしかりで社員がこうしたらいいんじゃないだろうかと現場で思うことを直接経営者に言うこともできます。
しかしながら、中小企業はワンマン経営者が多いものです。
けれどこれでは中小企業のメリットが生かされません。
原田社長の言う「思考する姿勢」というのは慢性的な人材不足に悩む中小企業の社員にこそ生かされるべきなのです。
ワンマン経営者の方は、「思考する姿勢の社員」を育て、自分が遊んでいても会社が儲かるくらいのしくみを作りませんか?
まずは、自分の考えを押しつけることなく、社員を信じてみることから始めてみるのもいいのではないでしょうか?