整骨院(接骨院)の市場は年々増加傾向にあり、特に東京、大阪など都市部における増加が顕著で、競争は激化しています。
増加している背景には、人々の腰痛、頭痛、肩こりなどに対するニーズが増えたこと、そして女性の社会進出に伴いOLなどの需要が増えたことがあげられます。
これからの開業にあたっては、いかに女性客を取り込むかが重要になってくるでしょう。
それでは、これから整骨院(接骨院)開業を成功させるにはいったい何に重点をおいて考えていかなければならないのでしょうか?
整骨院(接骨院)を開業するには「柔道整復師」という国家資格が必要で、開業後は健康保険が使えますが、開業するには都道府県知事、保健所に開設の届出が必要で、施設の設備構造に基準が設けられているため、物件選びに注意が必要です。
整体師やカイロプラクティック師は民間資格で健康保険は使えませんが、施設に基準はなくベッドひとつでオープンすることもでき、手軽に開業することができます。
お客様には整骨院や接骨院、整体やカイロプラクティックの違いはわからないかたがほとんどだと思います。
近隣に整体やカイロプラクティックはあっても、整骨院(接骨院)はないからといって競合他社がいないとみるのは大きな間違いです。
整骨院(接骨院)を開業する場合には施設に「構造設備基準」が設けられています。
①6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
②3.3平方メートル以上の待合室を有すること。
③施術室は、室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。
ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
④施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
この基準をクリアしないと保健所等から認可がおりないため開業すら出来ません。
一番簡単なのは、以前整骨院(接骨院)を経営していた物件をそのまま利用すること(いわゆる居抜き物件)です。
居抜き物件とは、その物件の前のオーナーが空調や設備、電気製品や備品をそのままにして撤退した物件を言います。
居抜き物件の場合の内装や設備は、まだ前のオーナーのものです。
ですので、前のオーナーに対して造作譲渡料(権利金)を払って、内装や設備を買うことになります。
居抜き物件を探すことで、この費用は大幅に軽減されますが、どうしてこの場所を撤退することになったのか、また、不必要な設備も置いていっている場合がありますので、充分なリサーチが必要です。
物件を選ぶ場合には「立地」はもっとも重要になります。
物件選びにもコンセプトが重要です。
骨折や捻挫をした患者、足腰の弱い高齢者をターゲットにする場合は、バス停に近いことやバリアフリーであること、車いすの利用などを考えてエレベータの広さなどを考慮する必要があるといいでしょうし、会社帰りのOLがターゲットなら、駅前のわかりやすい立地などがいいでしょう。
競合他社に負けないような交通の便がいい立地を探しましょう。
最近では競争が激化しているため、他店との差別化を計るためにも、近隣店舗にはない内装の工夫が必要になってきます。
女性客が急増しているため、清潔感のある内装はもちろんのこと、女性客が入りやすい特徴ある店舗作りが大切です。
競合他社の内装リサーチや、女性客が多いエステサロンやネイルサロン、美容室などの内装を参考にしてみるのもいいかもしれません。
整骨院(接骨院)のサービス内容として、低周波治療器や遠赤外線治療器、ローラーベッドやウォーターベッドなどの機材による施術をセットにしているところが多くあります。
また、保険請求を行うためのレセプトコンピューター(レセコン)も必要になります。
安いものであればレセプトを出力するだけのものもありますし、顧客情報管理などもできる高性能なものまで値段によりさまざまです。
そのほか施術台や待合室のイス、お客様用の着替え、シーツ、タオル、テーピングや包帯などの消耗品・備品も必要となります。
開業資金としては、賃貸物件であれば保証金(賃料10ヶ月分程度)、仲介手数料、外装・内装工事費用、設備投資費用、広告宣伝費、運営が軌道に乗るまでの運転資金です。
開業資金を抑えたい場合は、設備をリースにすることも出来ます。
開業資金が足りない場合は金融機関等からの融資をうけることになりますが、開業してすぐ運営が軌道に乗るわけではありません。
軌道に乗る前からも賃料やリース料などの固定費は毎月発生しますので、出来る限り自己資金を用意出来るようにしましょう。
整骨院(接骨院)は特に大きな支出を伴う仕入れもなく、売上も現金で回収できますので、運営が軌道に乗れば運転資金に困ることはありません。
しかし、運営が軌道に乗るまでは、売上が無くても毎月の固定費(賃料や設備のリース料など)は発生しますし、健康保険適用の場合は保険診療報酬が入金されるのは2~3ヶ月後になりますので開業してからの数ヶ月間分の運転資金は用意しておく必要があります。
開業後の月間売上計画の計算方法は、
で、計算することができます。
費用の計算をする時には費用を「固定費」と「変動費」にわけて考えます。
固定費とは、月々の売上に関係なく固定して発生する費用のことで、整骨院(接骨院)では賃料や設備のリース料などがあたります。
そして変動費とは、売上高に応じて増減する費用のことで、包帯やテーピングなどの消耗品費や人件費、水道光熱費、広告宣伝費(クーポンサイトでの告知、割引券の作成など)のことです。
ここでいう人件費とは従業員のお給料や交通費などで、自分のお給料はこの中には計算しません。
毎月の売上が固定費と変動費を足したものとイコールになれば利益はゼロで、これを損益分岐点と言います。
つまりこの損益分岐点が整骨院(接骨院)を経営をしていくにあたっての最低ラインになり、売上が費用を上回って初めて自分のお給料になるわけです。
整骨院(接骨院)経営を軌道にのせるポイントとしては、あたりまえのことではありますが、
1. 施術者の技術力
2. 既存客を維持する努力
3. 既存客からの口コミによる新規客の増加
この3点です。
整骨院(接骨院)に来るお客様は体のどこかしらに不調を訴えているわけですが、直接体に触れて施術を行う整骨院(接骨院)は病院以上に新規のお客様には警戒心があるものです。
施術をしてもらったら逆に悪くなった、という経験を持つお客様が少なくないからです。
新規のお客様を増やす確実な方法は、既存客からの口コミです。
しかし、口コミを得るには施術者の技術力が確かであることが必須条件となります。
施術者の技術力向上のためには、開業してからも腕を磨くためにセミナーや勉強会に参加したり、新しい設備を導入したりして、日々努力し続けること、そしてそれをお客様に告知していくことも大切です。
最近では、広告宣伝のためにホームページやブログ、ツイッター、フェイスブックなどさまざまなツールがあります。
忙しくてつい更新を怠ってしまいがちですが、新規のお客様は意外とそういったネットを駆使した情報収集をしているものです。
ぜひセミナーや勉強会に参加した場合は積極的にアピールしましょう。
また、店舗にもそういった情報を記事にして張っておくことで、既存客の安心感・信頼感をえることが出来ます。